私は会社で人事部長をしていますが、仕事の中で実際に少額訴訟の手続きをしたことがありますので、そのときの話を紹介させていただきます。
事の発端は、わが社の給料担当者が元従業員の退職時に、給与から欠勤分のお金を差し引いたり、未払いの住民税等が回収できていなかったことから始まりました。
目次
元従業員が過払い給与や未払住民税を支払わない
未回収に気がついた給料担当者が何度も元従業員にお金を支払うように催促したのですが、散々文句を言った挙句に支払わないと言っていた様なので、支払いの意思もないし、悪質だと思いましたので、最終的に、私が少額訴訟を行なう決意をしました。
少額訴訟をするといっても、法的な知識もないし、そもそも少額訴訟の手続きも、60万円以下の金銭的なトラブルに利用できて、1日で終わる簡単な裁判だという程度の知識しかありませんでした。
よって、手続きは手探り状態から始めなければなりませんでした。
まず始めに、裁判に必要な書類を教えてもらうために、簡易裁判所に行って来ました。
その受け付けで、少額訴訟の手続きに必要な書類について教えてもらいました。
裁判所は少額訴訟の訴状の書き方を教えてくれない
訴状や証拠書類や収入印紙や郵便切手が必要だと言われましたが、その必要書類の中で訴状の書き方が難しかったので教えてもらおうとしましたが、書き方については教えられないし、素人では作成するのが難しいので弁護士や司法書士に頼むように言われました。
(この対応ははっきり言って、不親切だと思いました。
素人が簡単に気軽に少額な金銭的なトラブルを解消するために裁判できる。
それが、この少額訴訟のウリだったはずなのに、訴状の作り方を全然教えてくれないなんて。
普通の人だったらこの時点でやっぱり難しいから諦めようとなるはずです。)
司法書士に依頼した場合の報酬
早速知り合いの司法書士に費用を確認したのですが、最低でも10万円報酬が発生すると言われました。
今回のケースは数万円の過払い給料給与や未払い税金に対する少額訴訟でしたので、それでは費用倒れでやらないほうがましです。
そうならないために社長に許可を得て、ダメもとで弁護士等の法律家を頼らずに、私自身の力で少額訴訟の手続きを進めていくことにしました。
一番手続きで難しかったのが、訴状の作り方だったのですが、インターネットのホームページで少額訴訟、訴状、書き方のキーワードで検索したら記入例がたくさん出てきましたので、その記入例を参考に作成しました。
そんな感じで、何とか一通りの少額訴訟の書類が揃ったので、一式を持って近くの簡易裁判所にもって行きました。
少額訴訟するためには、その場で判決が出せるように状況が分かる証拠書類をすべて揃えて提出しなければならないのですが、自分から社長に少額訴訟したいといった手前絶対に勝訴したかったので、証拠書類については相手を敗訴させるのに十分な書類を用意できたと自信を持っていましたが、訴状に書いた内容が法的に通用するかどうかは全く自信がありませんでした。
法的な要素を満たしていない文章でそのまま受付になってしまうと裁判で不利になると思っていたのですが、その心配は私のとりこし苦労に終わりました。
書類一式を持っていくと裁判所が訴状の問題点などの修正
法的に問題がありそうなところや言葉足らずのところは、窓口の担当者が私に質問して、その上でどのように修正すればいいか教えてくれました。
訴状の修正や訂正以外に、訴状等が必要部数に足りなかったり、委任状や法人の身分証明書でもある謄本を持っていっていなかったので、一回目は書類を受け付けてもらえませんでした。
初めてのことなのでしょうがないことでしたが、被告が2名のケースでしたので、余分に一式必要であったことと、裁判に法人の社長が出ずに私が代理人として少額訴訟に出席して、その全ての権限を委任してもらうのに必要な書類がなかったことが受け付けて貰えなかった理由でした。
そして、少額訴訟に必要な書類をすべて揃えて裁判所に提出しました。
それから数日して、簡易裁判所から「保証人に訴状を送ったところ結婚等で苗字が変わっている。裁判時に本人確認の必要があるので保証人の戸籍謄本を提出して欲しい」といわれました。
戸籍謄本を取るのに本人の委任状がなくてもとれるのかどうか分からなかったので、裁判所に確認したところ、裁判で必要である旨を伝えれば第三者でも取得できるということでした。
そして、保証人の戸籍謄本を提出して再度、訴状などを裁判所から郵送してもらいました。
これで、少額訴訟までの手続きは完了した。
そう思っていたら、裁判所から被告本人に郵送していた訴状等が、保管期間を過ぎても郵便物を取りに来なかったので、簡易裁判所に訴状が戻ってきたと報告を受けました。
この場合、次の手続きとしては休日を指定して再度送付するか、職場が分かればその職場に送付するかそのどちらかを選択することになります。
この手続きをする為に、送達方法等申出書の提出が必要になってきます。
結局、新しい職場が分からなかったので、休日を指定して再送付することにしました。
過払い給与や未払住民税を少額訴訟で全額回収
少額訴訟当日、簡易裁判所にいっていきなりびっくりしたのですが、法廷の入り口が一つしかなく、原告と被告が同じ入り口から入って、裁判が始まるまで傍聴席でお隣同士で待機することもあるのです。
下手をしたら横並びの一触即発の状態で、最悪殴り合いになるのでは?というシチュエーションでした。
私たちが到着したときにまだ被告がきていなかったので、部下と一緒に原告席に座ろうとしたのですが、書記兼進行役の人から代理人である私しか原告席に座れないと指摘されました。
細かい説明は部下にさせようと思っていたので、私一人で説明できるか不安だったのですが、部下を裁判に参加させることは不可能だということで泣く泣く傍聴席に座ってもらいました。
そのうちに被告が傍聴席に現れたのですが、私が不安に思っていた通り私の部下が座っていた傍聴席の真後ろに座りました。
原告席から見ていて本当に陰険な雰囲気でした。
しばらくすると被告が傍聴席から自分には身に覚えが無いことだと裁判所の人に訴えだしたので、裁判官が来るまでであったら傍聴席で原告被告同士で話し合ってもかまわないと言ってくれたので、私と部下と被告の3人で話し合いをしました。
被告もお金を払いたく無いのでどうにかこうにかしてこちらを言いくるめようと必死で抵抗してきましたが、最終的に裁判に入る前に自分の理屈が通らないことに気がついたのか、わが社に対して住民税と欠勤料を支払わなければならないことは理解してくれました。
被告が全面的に認め無事勝訴
そのあとすぐに、裁判官が入ってきたので、私は原告席へ、被告は被告席へ座り少額訴訟が始まりました。
裁判は淡々と進み、原告の訴えを被告が全面的に認めたので、特に言い争うことも無く、支払い方法を決めるだけでした。
相手から一括で払えないといわれたので、こちらから3分割での支払いを提案して、被告に受け入れられたので和解することになりました。
和解案は、裁判官が原告被告に対して質問をして、その回答によって作られるような感じでした。数日後に簡易裁判所から和解通知書が届きましたので、この和解通知書どおり貸し金が返済されたらこの事件は解決と言うことになります。
もし、支払いが滞るようなことがあれば今後は実力行使で給料等の差し押さえと言うことになりますが、最終的に3分割で支払いが完了しましたので一件落着です。
このように少額訴訟制度を利用すると、支払う意思がない相手からも金銭の回収が出来るので、少額の金銭的なトラブルが発生した時に有効に活用出来る手段の一つになります。